名古屋大学人文学研究科 Graduate School of Humanities / School of Humanities

日本語学 Japanese Linguistics

大学院

 日本語学では、日本語に関するあらゆる事実が研究対象となる。
 歴史的存在としての日本語は5世紀の資料に遡り、8世紀奈良時代語が体系的に復元可能である。平安時代以後も文学作品や古文書、訓点資料、古辞書、講義資料(抄物)、外国資料を中心に日本語の歴史研究が盛んに行われている。中世前期の院政鎌倉時代語、後期の室町時代語、近世前期上方語、後期江戸語、明治時代語などの研究が高い水準を維持している。空間的存在としての日本語は、北海道方言、奥羽方言から琉球方言に至る地域言語の集積体である。日本語は方言の差異が著しく、共通語の支えがなければ相互の通話が不可能な場合がある。社会的位相の集積としての日本語は、皇族の話し言葉を最上層として、放送、演劇および知識人社会で用いられる人工的な標準的口語共通語が広範な社会的権威を保っている。一方で、場面や共有知識に依存して省略を好み、動態を呈する方言談話が日常的に使用されている。総体としての日本語は、多様な方言と位相および歴史的累積を抱えた複合体である。日本語学では、これらすべての現象が研究対象となる。

 名古屋大学日本語学研究室所属の博士前期課程の大学院生は、自ら研究課題を設定し全力を傾けて修士論文を執筆する。その過程で、研究者として自立できるかどうかが試されるとともに、高度職業人としての高い教養を身につけていくことになる。課程修了後、国語科教員、官公庁・新聞社等の職員として社会に旅立ち、日本語に関する高度な知識と技能を備えた人材が数多く活躍している。前期課程を修了し、研究者として自立できる可能性を認められたものが博士後期課程に進学する。後期課程の院生は、博士論文の制作を目標にして、学界の第一線に立つことが望まれる。大学院在籍中に積極的に学会・研究会で発表を行い、全国学会誌・国際学会誌に論文を掲載することが強く期待される。日本語学研究室は、この期待に応えた結果として各領域の第一線に立ち、日本語研究を牽引する研究者を輩出しつづけている。研究者への道は、着実な努力と研鑽の先に確実に見えてくる。

担当教員
学部

 日本語学では、日本語に関するあらゆる事柄が研究対象となります。
 「ことば」という最も身近な現象、例えば方言や日常談話に関心を向け、文法や語の意味あるいは音声が意思の伝達にどうかかわるのか、その歴史的由来は何か、という問いをたてること、これを課題として追究することが日本語の研究の中核をなします。また日本語はなぜ研究されるのか、その意義は何か、精神的な力の源や動機はどこにあるのかという研究の根源的基盤を問う学説史、権力は言語をいかに管理するか、社会の多様な側面が言語とどうかかわるかを考える社会言語学も重要な関心事となります。話し手の社会的な役割や、発話・伝達の目的、手段、誰が聞き手かといった違いに応じて使い分けられる文体の多様性とその歴史的展開も、日本語の運用面の興味深い現象です。日本語研究の成果の国語科教育への応用、日本語を母語としない学習者への教育を目的とした追究など、教育との関わりも現代的意義の大きな課題といえます。

 日本語研究は、鎌倉時代の古典注釈に源を発します。以来、文語(書き言葉)や和歌をはじめとした文芸を操るための"てにをは"と"仮名違い"という技術に磨きをかけて発展してきました。とくに近世以後は、論証の緻密さと合理的推論に特色を発揮して急速な発展を遂げ、他の学問領域にも強い影響を与えてきました。近代になって西洋の言語学を導入して後も、日本文学、日本史学、漢文・漢語学、書誌学、日本思想など関係分野を含む伝統的知識を継承しながら人文科学の中で個性的な学統として今日に至っています。現代の日本語学は、言語共同体の思考様式や言語にかかわるすべての人間行動の根本の仕組みを復元する広い視野を獲得しています。古典注釈の方法から一般言語学の分野として発展した日本語学は、日本語教育学、国語教育学を含む応用言語学的な日本語研究の基盤的位置にあり、その重要性と学問的関心をますます高めつつあるといってよいでしょう。

担当教員

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超域人文学繋

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